モーションの重ね #
インタラクティブ性の高い対話を実現するためには、「お辞儀しながら話す」「手を振ってる途中で話しかけられたので手を振るのを止めて聞く」「発話している途中で何かに気づきつつ話を継続する」といった複合的な動作を会話中に生じるイベントに合わせて動的に行う必要があります。MMDAgent-EX ではこのために、複数の部分的なモーションを組み合わせて並列再生する機構を備えています。
以下はモーションの重ね合わせの模式図です。図中の Glance.vmd は頭と顔だけを動かし、Response.vmd は手指と表情を動かすモーション(部分モーション)です。全てのモーションは並列に姿勢計算され、重なる部分は優先度の高いモーションが適用されます(ブレンドや加算等も設定次第で可能です)。この仕組みによって、その場のユーザの入力や状況に合わせてその場でモーションを組み合わせながら再生し、リアルタイムに複合的な動きを実現できます。
以下では Example の中にあるモーション重ね合わせのデモを通じてその仕組みの紹介と使い方を解説します。
Example のモーション重ね合わせデモを動かしてみる #
Example の example_motion
フォルダ内にモーション重ね合わせのデモがあるので動かしてみましょう。
example/
|- example_motion/
|- example_motion.fst FST script
|- example_motion.mdf .mdf file
|- gaze.vmd motion: gaze
|- onehandwave.vmd motion: waving a hand
+- walk.vmd motion: walking
example_motion.mdf
を MMDAgent-EX で起動してください。下記のようにモーション walk.vmd
がループ再生された状態で起動します。
この状態で 1
キーを押すと、ジェネがこちらに目をやります。これは「左側を向いて見る」だけのモーション gaze.vmd
を歩きモーションに重ね再生しています。
さらに、2
キーで手を振るモーション onehandwave.vmd
が重ね再生されます。onehandwave.vmd
は笑顔の表情および右腕の動きだけが定義されたモーションで、これを歩きモーションや左を向くモーションと重ねて再生することで、「任意のタイミングでこちらを見て挨拶を行う」ような制御を行える様子を見ることができます。
モーションエイリアスと一覧表示 #
上記のデモの .fst スクリプト example_motion.fst
を見てみると、以下のように、起動後 1
キーを押されたタイミングで gaze.vmd
が、2
キーが押されたタイミングで onehandwave.vmd
がそれぞれ MODEL_ADD
で再生されるよう記述されていることが分かります。
0 LOOP:
<eps> STAGE|../images/floor_block.png,../images/back_white.png
<eps> MODEL_ADD|gene|../gene/Gene.pmd
MODEL_EVENT_ADD|gene MOTION_ADD|gene|base|walk.vmd|FULL|LOOP
<eps> CAMERA|0,11.25,0|13.5,-50.0,0|46.4|27.0
LOOP LOOP:
KEY|1 MOTION_ADD|gene|look|gaze.vmd|PART|ONCE
LOOP LOOP:
KEY|2 MOTION_ADD|gene|greet|onehandwave.vmd|PART|ONCE
walk.vmd
が “base”, gaze.vmd
が “look”, onehandwave.vmd
が “greet” というように、それぞれ異なるモーションエイリアス名をつけます。これらの並行再生されるモーションの管理は互いに独立であり、それぞれ個別に MOTION_DELETE
や MOTION_CHANGE
で制御することができます。
動作中に b
キーを押すことで、現在実行中のモーションの情報を見ることができます。以下は表示例です(もう一度 b
キーで消えます)。緑色の文字がモデル名です。その下の水色の名前がモーションエイリアス名で、優先順の低いほうから高いほうへ順に表示されます。ピンク色の線は各モーションが再生するボーンの動きの簡易表示です。
重ね合わせ再生の詳細 #
重ね合わせ再生に関連する MOTION_ADD
メッセージの詳細な仕様を説明します。
部分モーション指定 #
モーションを重ね再生するときは、あとで重ねる側のモーションを、全身モーションではなく動きのあるパーツだけ制御する「部分モーション」として開始する必要があります。
部分モーションとして再生するには、MOTION_ADD
で以下のように第4引数に “PART” を指定します。
部分モーションとして開始されたモーションは、そのモーション内で動きが定義されていない(=0フレーム目だけに定義がある)ボーン・モーフを無視し、動きが定義されている(=1フレーム目以降にキーフレームがある)ボーン・モーフの動きだけが適用されます。
通常の全身モーションとして扱う場合は FULL を指定します。省略した場合のデフォルトは FULL です。
ループ再生指定 #
通常のモーション再生では、モーションの最終フレームまで再生したらそのモーションは自動的に消えます。これを、最初のフレームに戻ってループ再生するよう指定することができます。
モーションをループ再生したい場合は MOTION_ADD
の第5引数に LOOP を指定します。ループ指定されたモーションは最終フレームまで再生したら0フレーム目に戻り、ずっと再生されます。ループ再生は MOTION_DELETE
かモデルを削除することで止まります。
1回のみ再生を明示的に指定するには ONCE を指定します。省略した場合のデフォルトは ONCE です。
スムージングを切り替える #
重ね合わせ再生時に継ぎ目の部分でモーションの飛びが発生するのを避けるため、MMDAgent-EX ではモーションの開始時と終了時に自動でモーションスムージングが入ります。何らかの理由でこれを OFF にしたい場合は、第6引数をOFFに指定してください。